
「滝行では何か言葉を唱えるらしいけど、覚えていかないといけないの?」と不安に思う方がいるかもしれません。
結論から言うと、事前に覚えていく必要はまずありません。ただ、どんな言葉を唱えるのかを知っておくと、当日の心の準備になります。この記事では、滝行で唱えられる言葉を宗派別に整理し、初心者が知っておくべきことをまとめます。
- 滝行で唱える言葉は宗派・お寺によって違うこと
- 宗派別の代表的な真言・お経・祓詞
- 「指導者が唱える」「自分で唱える」2つのパターン
- 事前に覚える必要がない理由
滝行で唱える言葉は宗派・お寺によって違う
まず知っておきたいのは、滝行で唱える言葉に「唯一の正解」はないということです。
滝行は、天台宗・真言宗・日蓮宗といった仏教の各宗派から、神道、さらには新興宗教まで、宗派を問わず広く行われています。そのため、唱える言葉もそれぞれの宗派やお寺の考え方によって異なります。真言宗系のお寺では不動明王の真言を、日蓮宗系のお寺では「南無妙法蓮華経」を、神社では祓詞(はらえことば)を唱えるといった具合です。
まず大前提──当日は指導者の言葉に従えばいい
最も大切な大前提をお伝えします。滝行では、その場の指導者の指示に従えば大丈夫です。唱える言葉を事前に暗記していく必要は、基本的になく、何も心配に思う必要はありません。
唱え方には、大きく2つのパターンがあります。
- 指導者が唱えるのに合わせる(または続いて復唱する)パターン──指導者が先導してくれるので、それに合わせて声を出せば大丈夫です
- 自分で唱えるパターン──短い言葉を教わってから、自分で唱えながら滝に入ります
どちらのパターンでも、その場で指導者が教えてくれるので、事前準備なしで参加できます。だからこそ、この記事の内容は「覚えるため」ではなく、あくまで「心の準備」として読んでいただければと思います。どんな言葉を唱えるのか事前にイメージがあるだけで、当日の安心感が変わりますし、意味合いがわかるとより体験としての深みが増すかなと思います。
なぜ声に出して唱えるのか
そもそも、なぜ滝行で言葉を唱えるのでしょうか?
ひとつには宗教的な意味合いがありますが、実は実用的な面もあります。冷たい水と水圧のなかで声を出し続けると、自然と呼吸が整い、冷たさや衝撃への意識が薄れていくのです。唱える言葉は、心を落ち着け、修行に集中するための助けにもなっています。自分で唱えるパターンの滝行スポットでは、しっかりと声を出すようにしましょう。
滝行でよく唱えられる言葉【宗派別】
代表的な唱え言葉を宗派別に紹介します。繰り返しになりますが、これらは「知っておくと安心」という程度のもので、暗記は不要です。
不動明王の真言(真言宗・天台宗系に多い)
滝行の場では、不動明王(お不動様)を祀っていることが多く、その真言がよく唱えられます。不動明王の真言には長さの異なる種類がありますが、代表的なのは次の2つです。
おそらくほとんどの方が聞き馴染みがないと思うのでこの言葉を使わない場所もありますが、一応知っておくと興味深いですね。
短いもの(小咒・しょうじゅ)
「ノウマク サンマンダ バザラダン カン」
よく知られたもの(慈救咒・じくのしゅ)
「ノウマク サンマンダ バサラダン センダンマカロシャダ ソワタヤ ウンタラタ カンマン」
これは「障害を取り除き、願いを叶えてほしい」と不動明王に祈る言葉とされています。
梵語(サンスクリット)を音写したものなので、お寺や流派によって「バサラダン」「バザラダン」など細かい発音の違いがあります。使う場合はここでも、その場で唱えられる音に合わせれば問題ありません。
南無大聖不動明王(お不動様への帰依)
真言そのものではなく、「南無大聖不動明王(なむだいしょうふどうみょうおう)」と唱えるお寺もあります。
「南無」は「帰依します」という意味で、お不動様に心から帰依することを表す言葉です。真言よりも意味がわかりやすく、初心者でも唱えやすいのが特徴です。
光明真言(こうみょうしんごん)
光明真言は、真言宗の中でも重要とされる梵字で23文字の短い真言です。一応載せておくと「オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラ ハラバリタヤ ウン」です。(宗派により差があり)
「大日如来を中心とする仏に帰依し、その光明で心身の穢れを浄化していただく」というような意味で、すべての災いを取り除く力があるとされ、真言宗系のお寺で唱えられることがあります。一般の人が唱えても功徳を受けられるとされている真言です。
南無大師遍照金剛(真言宗・弘法大師信仰)
弘法大師(空海)への信仰があるお寺では、「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と唱えることがあります。
これは弘法大師に帰依することを表す言葉です。空海が修行したと伝わる滝行スポットなどで用いられます。
南無妙法蓮華経(日蓮宗系)

日蓮宗系のお寺で行う滝行(水行)では、「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」という題目を唱えます。
日蓮宗では滝に打たれることを「水行」と呼ぶことも多く、力強く題目を唱えながら冷水を浴びるのが特徴です。
祓詞・大祓詞(神道系)
神社で行う滝行(禊)では、仏教のお経ではなく、神道の祓詞(はらえことば)や大祓詞(おおはらえのことば)を唱えます。一応の例として、修祓の基本の祝詞を載せておきます。
掛けまくも畏き 伊邪那岐大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 御禊祓へ給ひし時に 生り坐せる祓戸の大神等 諸々の禍事・罪・穢 有らむをば 祓へ給ひ清め給へと 白す事を 聞こし食せと 恐み恐みも白す
(読み:かけまくもかしこき いざなぎのおおかみ/つくしのひむかのたちばなのおどのあわぎはらに みそぎはらへたまいしときに/なりませるはらへどのおおかみたち/もろもろのまがごと・つみ・けがれ あらむをば/はらへたまいきよめたまへと もうすことを/きこしめせと かしこみかしこみももうす)
心身の穢れを祓い清めることを願う言葉です。神職の先導で唱えることが多く、参加者は後に続く形になります。
実際のスポットではどう唱える?
これまで当サイトで紹介してきたスポットでも、唱える言葉はさまざまです。いくつか例を挙げます。
- 高尾山薬王院(東京)──真言宗智山派の大本山。琵琶瀧などで「南無大聖不動明王」を唱えながら滝に打たれます
- 光明寺(兵庫)──真言密教の寺院。「南無大師遍照金剛」を唱えるスタイルです
- 日蓮宗系のお寺──「南無妙法蓮華経」の題目を唱えます
- 神社の禊──神職の先導で祓詞を唱えます
このように、行くスポットの宗派によって唱える言葉は変わります。どのスポットでも、当日その場で教えてもらえるので、事前に調べていく必要はありません。それぞれのスポットの詳細は高尾山薬王院の滝行ガイドや光明寺の滝行ガイドなどでも紹介しています。
唱える言葉を予習しておくメリット
呼吸が整い、冷たさへの意識が薄れる
暗記は不要とはいえ、どんな言葉を唱えるのかイメージがあると、当日スムーズに声を出せますね。滝に入った瞬間は冷たさと衝撃で頭が真っ白になりやすいものですが、唱える言葉があると、そこに意識を向けることで自然と呼吸が整い、冷たさへの意識が薄れていきます。声を出すことは、滝行を乗り切るための実用的な助けにもなるのです。
心の準備になる
「何をするのか全然わからない」状態と「だいたいこういう言葉を唱えるらしい」と知っている状態では、当日の心の余裕がまったく違います。初めての滝行は誰でも緊張するものですから、事前にイメージを持っておくだけでも、落ち着いて臨めます。この記事を「心の準備」として役立てていただければ十分です。
初めての滝行の準備全般については初めての滝行を成功させる10のコツ、当日の流れは滝行のやり方と作法もあわせてご覧ください。
まとめ──言葉は「覚える」より「委ねる」
- 滝行で唱える言葉は宗派・お寺によって違い、「唯一の正解」はない
- 真言宗・天台宗系は不動明王の真言や「南無大聖不動明王」、日蓮宗系は「南無妙法蓮華経」、神道系は祓詞
- 唱え方は「指導者に合わせる」「自分で唱える」の2パターンがあるが、どちらも当日教えてもらえる
- 事前に暗記する必要はなく、知識は「心の準備」として役立てればいい
- 声を出すことで呼吸が整い、冷たさや衝撃への意識が薄れる実用的な効果もある
滝行で唱える言葉は、頑張って覚えていくものではなく、その場の指導者に委ねれば大丈夫です。どんな言葉を唱えるのかを知っておくことは、あくまで心を落ち着けるための準備。肩の力を抜いて、当日を迎えてください。
よくある質問
Q. 唱える言葉を事前に覚えていく必要はありますか?
A. 基本的に必要ありません。当日、指導者がその場で教えてくれます。指導者に合わせて唱える場合も、自分で唱える場合も、事前準備なしで参加できます。
Q. どの宗派の言葉を唱えるかは、自分で選べますか?
A. 基本的には、行くお寺や神社の宗派に沿った言葉を唱えます。自分で選ぶというよりは、そのスポットのやり方に従う形になります。特定の宗派の作法で行いたい場合は、その宗派のお寺を選ぶとよいでしょう。
Q. 言葉の意味がわからなくても大丈夫ですか?
A. 大丈夫です。真言などは梵語を音写したもので、意味を厳密に理解していなくても、声に出して唱えることに意味があるとされています。まずは指導者に合わせて声を出すことを意識すれば十分です。